〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木 未来への風 国際啄木学会函館大会」岩手日報


ツユクサ


「啄木 未来への風」
  国際啄木学会創立20周年記念函館大会は、函館市で9/5-7の3日間行われた。

  • 研究発表
    • 北村克夫さんは「啄木と西堀秋潮」と題し、江差・函館ゆかりの歌人・秋潮の足跡をたどった。秋潮は「調べた限りでは、北海道の歌人の中で啄木から最初に年賀状をもらった人」で、啄木が札幌の北門新報から小樽日報に移る際、秋潮から支度金を借りたことが啄木の日記に記されている。
    • 権藤愛順さんは「木下杢太郎と石川啄木」として、大逆事件を契機とする杢太郎と啄木の再接近を考察した。大逆事件の死刑判決を知り涙した啄木に、杢太郎から手紙が届く。手紙に書かれた「色々の事」を読んだ啄木は、「結局頭の中心に超人といふ守本尊を飾つてゐる男である」と記す。
    • P. A.ジョージさんは「異文化の観点から見た啄木短歌の難しさ」と題して『一握の砂』のマラヤーラム語訳を紹介した。「普遍的抽象的な面が共通する短歌の翻訳は易しい」が、「難しいのは、日本独特の文化的様相の濃い短歌」とした。
  • 国際シンポジウム

テーマ「海外における『一握の砂』の受容をめぐって」

    • 台湾の高淑玲さんは「台湾では各地で短歌会の活動が続けられ、歌集も多く出版されている」と紹介した。
    • 米国生まれのチャールズ・フォックスさんは啄木短歌が米国人に読まれるかについて「感傷的な内容が多く、これは受容されている」、「大都会の孤独をうまく表現されている歌もある」と紹介。
    • 韓国の孫順玉さんは、五七五のリズムについて「韓国語でもできる。訳す際、少し語句を挿入し、定型のリズムを生かす」と披露した。
    • インドのウニタ・サチダナンドさんは、「日本文学に対するインド文学者の興味が大きくなっている」と述べた。
  • 対談
    • 現会長の太田登さんと前会長の近藤典彦さんが、国際啄木学会20年間の歩みを振り返った。
    • 学会名に「国際」を付したことは先見の明があった」と振り返り、「国際化」「学問としての啄木研究」を主要な成果に挙げた。
    • 「研究が学会内にこじんまりとまとまり、国内に発散していっていない」との指摘があった。

(2009-09-09〜10 岩手日報