〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木の短歌、賢治の短歌 第6回・第12回」

【モチノキの花】


「啄木の短歌、賢治の短歌」盛岡タイムス連載中
  盛岡大学長 望月善次


第6回 不遇1(2008年4月15日)

  • 啄木の歌

  友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
  花を買ひ来て
  妻としたしむ

  • 賢治の歌

  友だちの
  入学試験ちかからん
  林は百合の嫩芽(どんが)萌えつゝ

    • 啄木の場合の凄さは啄木個人の感慨を越えて「不遇の者が、誰でも感じる思い」の普遍化を成し遂げていることである。賢治の場合は、個人の嘆きに即しているように感じられる。


第12回 桜1(2008年4月29日 )

  • 啄木の短歌

  今も猶春くる毎に敷島の大和の国は
  桜ぞ咲きける

  • 賢治の短歌

  ほうさくらひとときに咲くこの国は
  花散りてまた雲きたるなれ

    • 桜を日本全土や東北・南部国という鳥瞰的な観点から取り上げている。「鳥瞰」もまた、二人の特質の一つ。