〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

詩を書き継ぐ「私」谷川俊太郎詩集

【弥生三月雛祭】


「私」谷川俊太郎詩集

「自己紹介」
“私は背の低い禿頭の老人です”
始めの一行に捕まった。


「さようなら」
“私の肝臓さんよ”と呼びかける。腎臓さん、膵臓さん、心臓さん、脳髄さんと続く。“私はこれから死ぬところだが”“君らと別れて”──身軽になりすっぴんになっていく、清々しい清さ。


「未来の仔犬」
“ぼくを愛してくれる未来の仔犬が
岬の一軒家のテラスでしっぽをふっている
あいつに会える日がくるまで
ぼくはまいにち日記を書きつづける”


表紙に書かれた「私」という題字は、大岡信さんの書。美しい!