〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「はたらけど/はたらけど猶…」石川啄木


[カエデ]


<金口木舌>貧困に向き合う  琉球新報

  • 石川啄木の「一握の砂」の代表歌の一つ。「はたらけど/はたらけど猶(なお)/わが生活(くらし)/楽にならざり/ぢつと手を見る」。今で言えば、ワーキングプアと呼ばれる人たちの心境か。
  • 人の暮らしには形態や質的な違いがありこそすれ、いつの時代も貧困がある。
  • 厚生労働省は、6月末時点の生活保護世帯数が最高を更新したと発表した。全国で162万5941世帯。県内は2万6221世帯で、そのうち那覇市が8998世帯、次いで沖縄市が3687世帯と続く。
  • 下流転落」なる言葉に恐れをなす人も多い。「貧ほど悲しき事はなし」という。貧困者だけの問題とせず、向き合うことで不安社会から安心社会に脱する処方箋は得られよう。

(2015-09-08 琉球新報

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<石をもて追わるるごとく> 石川啄木

<卓上四季>故郷  北海道新聞

  • <ふるさとは遠きにありて思ふもの>。室生犀星の有名な詩は発表当時、望郷の念を詠んだと言われた。しかし実際は、そう単純ではなかった。上京したものの作品がなかなか認められない。故郷の金沢で傷心を癒やそうとするが、義母の冷たい仕打ちに遭い、逆に孤立感が深まるばかり。故郷への愛憎相半ばする思いが込められているそうだ。
  • 先週末の二つの出来事を見て思い出した。東京電力福島第1原発の事故に伴う楢葉町の全町避難指示が解かれた。帰郷した住民にとって4年半ぶりのわが家の居心地はひとしおだろう。だが、除染廃棄物の袋が野積みにされ、水がめのダムに放射性物質が残る。
  • シリア内戦を逃れてきた難民ら2万人超がドイツに入った。「荒れ狂う海に子供の遺体が浮いていた」との証言が胸をつく。
  • 石川啄木は故郷を出る苦しみを<石をもて追わるるごとく>と表現した。原発と戦争は今や人々を古里から追いやることがある。人間が生み出しながら手に余る―。そんな怪物をいつまで放置するのか。

(2015-09-08 北海道新聞

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