<金口木舌>「平和の歌」はいつ
- いつもより早まった桜の話題で新聞もテレビも持ちきりだ。青空にハラハラと散る薄桃色の花びらの美しさは格別で、花の下で宴をする習慣のない沖縄人としてはうらやましい光景だ。
- 入学式、入社式。新しい季節の象徴となる花である。4月に没後101年となる歌人、石川啄木は「花散れば 先づ人さきに白の服 着て家出づる 我にてありしか」と詠んだ。花が終わると衣替えを待てず夏服姿になった若き啄木の高揚感が伝わる。
- 啄木はまた「草に臥(ね)て おもふことなし わが額(ぬか)に 糞(ふん)して鳥は 空に遊べり」と詠んだ。空は無心に見上げるもの、落ちてくるのは鳥の糞くらいという平和な歌は、今の沖縄とは無縁だ
(2013-03-27 琉球新報)