[ヒマワリ]
中日春秋【コラム】
- 若き歌人には朝鮮民族の未来に漂う暗雲が見えたのだろう。二十四歳の石川啄木は一九一〇年八月の韓国併合の直後、歌を詠んだ。<地図の上/朝鮮国にくろぐろと/墨をぬりつつ秋風を聴く>
- 韓国併合からちょうど一世紀。菅直人首相の「首相談話」がきのう閣議決定し、発表された。三十六年間に及んだ植民地支配を「韓国の人々の意に反して行われた」と位置付けて、「痛切な反省と心からのおわび」を率直に表明している。
- 啄木が百年前に墨を塗った国は、日本から解放された後も、民族同士が殺し合う内戦を経て二つに分断されたままだ。啄木だったら、今、どんな歌を詠むだろうか。
(2010-08-11 中日新聞>中日春秋)