〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

地図の上/朝鮮国にくろぐろと……石川啄木

[ヒマワリ]


中日春秋【コラム】

  • 若き歌人には朝鮮民族の未来に漂う暗雲が見えたのだろう。二十四歳の石川啄木は一九一〇年八月の韓国併合の直後、歌を詠んだ。<地図の上/朝鮮国にくろぐろと/墨をぬりつつ秋風を聴く>
  • 韓国併合からちょうど一世紀。菅直人首相の「首相談話」がきのう閣議決定し、発表された。三十六年間に及んだ植民地支配を「韓国の人々の意に反して行われた」と位置付けて、「痛切な反省と心からのおわび」を率直に表明している。
  • 啄木が百年前に墨を塗った国は、日本から解放された後も、民族同士が殺し合う内戦を経て二つに分断されたままだ。啄木だったら、今、どんな歌を詠むだろうか。

(2010-08-11 中日新聞>中日春秋)

「日韓併合」首相談話

  • 今年、エジプトやギリシャ、インドなど16カ国が開いた国際会議で、エルギン・マーブルなど著名文化財と共に返還要求リストに韓国が載せたのが「朝鮮王室儀軌」だった。日韓併合100年にあたり菅直人首相が発表した談話で韓国に引き渡しを表明した典籍である。
  • 「地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつつ秋風を聴く」。石川啄木韓国併合を批判して、こう詠んでから100年の歳月が流れたことになる。注目された首相談話はかつての村山富市首相の談話を踏襲する形で植民地支配への「痛切な反省とおわび」を表明した。

(2010-08-11 毎日新聞>余録)