〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

〈高山のいただきに登り/なにがなしに帽子をふりて/下り来しかな〉石川啄木

こいのぼり

2023.5.5みすず野

  • 連日の晴天で、田植えもキャンプも帽子が手放せない。テーマパークでジョーンズ博士の中折れ帽を阿弥陀にかぶっていたら、キャストの人から「お似合いですよ」と褒められたことがある。多分みんなに言っていたのだろう。
  • 学生時代は新品の制帽をわざとボロボロにし、弊衣破帽を気取った。漱石の〈三四郎〉も『伊豆の踊子』の〈私〉も。もしかしたら、啄木も盛岡中学のとき―〈高山のいただきに登り/なにがなしに帽子をふりて/下り来しかな〉『一握の砂』。
  • 牧水の旅支度は脚半とわらじに〈鳥打帽〉だから、今日のハンチングか。
  • 俵万智さんの〈思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ〉は、ちょっぴり切ない。〈ころがりしカンカン帽を追うごとくふるさとの道駈けて帰らん〉は寺山修司―きのうが命日だった。亡くなって40年の歳月が流れた。

(2023-05-05 市民タイムスWEB > 松本・安曇野塩尻・木曽 信州の地域紙)

 

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