全方位ch
「らんまん」で思い出す旧友のなまり
ふるさとの訛(なま)りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく(石川啄木)
- もう家族もいない実家の見回りでたまに故郷にもどると、里心がつくことがある。明治の人、啄木は短歌のように故郷の訛りが聞きたくなると駅に向かったのだろうが、当方は一本の映画を見ることにしている。
- 広島・呉を舞台にした「この世界の片隅に」という、一人の若い女性の目を通して戦時下の日常を描いたアニメ映画である。
- 近頃、朝になると、もう一つの懐かしい訛りが聞こえる番組にチャンネルを合わせる。4月から放送されているNHK連続テレビ小説「らんまん」だ。
- もう30年以上も前、京都の学生下宿を毎日のように行き来した友がいた。
- 思い出すのは、議論が白熱すると必ず互いのふるさとの訛りが口をついて出てきたことである。
「〇〇じゃけん、××じゃろうが」
「そら違うがやろう、△△がやき」
- 「らんまん」の主人公は彼と同じ佐川町出身の植物学者、牧野富太郎がモデル。そういえば、彼は郷土の偉人のこともよく話してくれた。そして、その名を口にするときには必ず「牧野富太郎先生」と「先生」を付けていたことを思い出す。(正)
(2023-05-06 産経新聞)
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