特別寄稿 啄木詩「飛行機」鑑賞
近藤典彦(国際啄木学会元会長)
詩人はリフレインで呼びかけます。
その疲れた眼をあげて見てごらん。今日も、あの蒼空に、君の希望が実現した姿のように飛行機が、高く、飛んでいるよ。
「飛行機」はわずか8行なのになんと内容豊かで、美しい詩なのでしょう。
こうしてリフレインは、「時代閉塞の現状」(四)の結びの呼びかけと重なります。
斯くて今や我々青年は、……全精神を明日の考察———我々自身の時代に対する組織的考察に傾注しなければならぬのである。
「飛行機」のリフレインは「時代閉塞の現状」の呼びかけと共鳴して響きわたります。
見よ、今日も、かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを。
「飛行機」は詩人石川啄木の希望の詩(うた)です、不滅の。
評論
板倉勇作は何に殺されたのか
—— 谷崎潤一郎『細雪』論 ——
栁澤有一郎(国際啄木学会会員)
はじめに
一、蒔岡家を眼差す板倉
二、神戸と「芸術写真」
三、芸術写真と薪岡家
四、妙子と板倉
五、何が板倉を殺したのか