〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

人間の弱い部分も正直に歌う啄木の飾らぬ心にこそ注目!

ラクウショウ

『潮』2023年1月号

【特集】浪漫と伝説の理想郷 岩手県

啄木を知ることは「人間」を知ること。

    山本玲子(啄木ソムリエ)

嘘偽りのない心と自由な考え方

  • 岩手が生んだ夭逝の天才歌人石川啄木。私は“啄木ソムリエ”として、全国津々浦々での講演や執筆活動、ラジオ出演などを通して啄木の魅力を伝える活動をしています。
  • 大学卒業後に縁あって1990年から岩手県内にある石川啄木記念館の学芸員として啄木の作品、特に日記を貪るように読み込むなかで、歌人としてはもちろん、人間・啄木にすっかり魅了されてしまいました。
  • 啄木の魅力を一言で言えば、「啄木を知ることは自分自身を知り、そして人間を知ること」だと考えています。
  • 最近、歌や詩など作品そのものより啄木が借金をしていたことや、自分の結婚式を“ドタキャン”したことなどを取り上げて面白がる風潮が一部であることは、啄木ソムリエとしては少々もったいないように思います。
  • 借金に関して言えば、啄木の歌に「何故かうかとなさけなくなり、/弱い心を何度も叱り、/金かりに行く。」というものがあります。啄木は何もお金を借りて平然としていたわけではなく、自分の弱さを素直に認めていました。
  • それはとても勇気がいることで、私はむしろ現代人こそ自分の心に嘘をつきながら生きているように見えます。だからこそ、人間の弱い部分も正直に歌う啄木の飾らぬ心にこそ注目をして、作品を味わって頂きたいと願います。

 

雑誌『潮』2023年1月号

 【特集】浪漫と伝説の理想郷 岩手県

【インタビュー】福田こうへい

内館牧子・濱中喜代・藤井 茂・宮澤和樹・山本玲子

なぜ岩手から逸材が陸続と輩出されるのか。

【野球編】及川彩子

【ウインタースポーツ編】齊藤大樹