〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「水中では懺悔も口笛もあぶく…」初の歌集出版 工藤玲音さん

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カナメモチ

啄木の「命日」に合わせ初の歌集 作家・工藤玲音さん

  • 盛岡市の作家、工藤玲音(れいん)さん(26)が、郷土を代表する歌人石川啄木の命日の4月13日に合わせ、初の歌集を出版した。啄木が亡くなったのと同じ年齢を迎え、「負けていられない」との思いから、作品をつくり上げた。歌集は「水中で口笛」。

 水中では懺悔(ざんげ)も口笛もあぶく やまめのようにきみはふりむく

  • 水の中にいるように息苦しく窮屈な環境でも、平気なふりをして口笛を吹く――。地元を離れ、大学時代に仙台市で一人暮らしをしたときに感じた、将来への不安や苦しさをうたった表題作から取った。
  • 会社員をしながら、小説やエッセーなど幅広い分野で文筆活動をしている工藤さん。16歳から創作を始めた短歌も高い評価を受けており、歌集の出版依頼が来るようになったが、「もっとうまくなってから」と断っていた。
  • 思いが変わったのは昨夏。石川啄木記念館(盛岡市)の館長から、啄木を語るイベントで対談への出演を頼まれた際、工藤さんが冬に啄木の享年と同じ年齢になることを教えられた。「彼が生きられなかった年齢をこれから自分が生きる」。焦りと同時に、歌集を生み出そうという意欲が芽生えた。(宮脇稜平)

(2021-05-08 朝日新聞

 

啄木の「命日」に合わせ初の歌集 作家・工藤玲音さん:朝日新聞デジタル