〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 盛岡市と文京区は啄木を通じて交流 企画展二つ


[ビヨウヤナギ]


啄木、東京時代の軌跡…盛岡で企画展

  文京区移住から110年

  • 盛岡出身の歌人石川啄木(1886〜1912年)が、晩年を過ごした東京都文京区に移り住んでから今年で110年。東京時代の活動を写真などで紹介する企画展が、盛岡市中ノ橋通の「もりおか啄木・賢治青春館」で開かれている。盛岡市と文京区は啄木を通じて交流を深めており、今年度は友好都市協定の締結を予定している。
  • 啄木は盛岡で代用教員などを務めた後、21歳で北海道に渡り、函館や釧路などの新聞社で働きながら短歌や詩、評論を発表した。「自分の文学的運命を極度まで試験せねば」と志を抱いて1908年に上京し、著名な文人が多く活動する現在の東京都文京区に住んだ。
  • 東京では森鴎外が主催する歌会に参加。言論統制の強化を批判した評論「時代閉塞の現状」を執筆し、代表歌集「一握の砂」を刊行するなど、文学的な才能を発揮した。文京区には、啄木の終焉の地を示す歌碑や顕彰施設がある。
  • 企画展「上京110年 啄木漂泊の旅」では東京時代を中心に、啄木の軌跡を振り返る写真パネルや書簡などを展示。文京区内の啄木の住まいや、慢性腹膜炎のため入院した病院などの様子を紹介している。啄木が愛した繁華街・浅草のにぎわいも解説し、明治末期の文学の隆盛の背景も学べる。展示は7月8日まで。問い合わせは同館(019・604・8900)へ。


最期見届けた友人・若山牧水の企画展…石川啄木記念館

  • 盛岡市渋民の「石川啄木記念館」では、啄木の友人で同世代の歌人若山牧水(1885〜1928年)の企画展が行われている。牧水が主宰する文芸誌に啄木が寄稿するなどして交流し、啄木の最期も見届けた。死の直前に牧水に託された短歌の草稿ノートが代表歌集「悲しき玩具」として出版され、啄木文学を後世に残す役割を果たした。
  • 展示は牧水直筆の短歌や書簡など約80点。旅好きの牧水は県内も訪れており、北上市の歌碑の写真などを通じて岩手との縁も紹介している。9月17日まで。問い合わせは同館(019・683・2315)へ。(多可政史)

(2018-05-30 読売新聞)


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