〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 啄木と北海道の人々との関わり 国際啄木学会開かれる


[キンミズヒキ]


国際学会 八雲大会 啄木と北海道に焦点 [岩手日報]

  • 国際啄木学会北海道八雲大会は 7、8の両日、八雲町で開かれ約100人が参加した。
  • 啄木が函館に赴いたのは、1907(明治40)年5月。翌年4月まで札幌、小樽、釧路を転々とし、それぞれ新聞社で働くなどして暮らした。
  • 7日は天理大学名誉教授の太田登さんが「啄木文学における北海道体験の意味」と題して記念講演。啄木の歌集「一握の砂」が杜甫松尾芭蕉に代表される「漂泊文学」の傑作だと評価した。
  • パネル討論は「啄木を育てた北海道−新聞・人・短歌」がテーマ。若林敦さん(長岡技術科学大学教授)は、北海道で初めて新聞記者を経験した啄木が、実社会により直接的に関わる記者の仕事を肯定的に捉えたと述べた。山下多恵子さん(日本ペンクラブ会員)は、「北海道の人々との関わりが、啄木に『石川啄木』とは何者なのか、どこへ向かえばいいのかを教えた」と強調。松平盟子さん(歌人)は、当時の文芸雑誌「明星」誌上での同人たちの活躍や啄木との落差を示す記述を紹介し、啄木の心情を推察した。
  • 8日は、4人が研究発表。山田武秋さん(国際啄木学会盛岡支部)は、折口信夫による「思想などのない啄木」という批評について、否定的なものではなく、短歌の本質を捉えたものだと指摘。「啄木の作品が100年を超えて愛され続けるのは、作品への情緒があったからこそ」と強調した。プラット・アブラハムジョージさん(インド・ネルー大学教授)は「一握の砂」を吟味して分かるのは、人間の全ての感情が詠まれていること。完璧な作品の一つと言っても過言ではない」と日本語で発表。


地元ファン盛り上げ 初開催の八雲町

  • 大会は石川啄木が作品を残した地域ではない北海道八雲町で初めて開催。
  • 地元の八雲啄木会は、2003年設立。毎月の例会は啄木の名歌鑑賞、研究発表などを行い、啄木ゆかりの地を巡る研修も続けている。長江隆一会長は「啄木は庶民の心を詠み、北海道の作品を多く残したことから共感されている」と生き生きした表情で語った。

(2017-10-11 岩手日報