「風土計」【岩手日報】
- 「その音とは、樹上から発するキツツキの木霊であった。その瞬間、少年は警告するキツツキに自己をなぞらえ、詩『啄木鳥』を編み出す。詩人啄木の誕生である」。
- 元国際啄木学会会長の遊座昭吾さんが6日、死去した。あたらめて著書「啄木と賢治」(2004年)を読む。盛岡大教授当時、有無を言わせぬ迫力に満ちた啄木や賢治文学の講義が思い起こされる。
- 数ある啄木と賢治論で「垂直と水平」の対比は鮮やかだ。樹上の動物が下の人間に警告を投げつける啄木の「垂直の意想」。一方の賢治には、セロ弾きのゴーシュと動物の交感に見られるような、共生の原理とも言うべき「水平の意想」。
- 閉塞感が強まる現代。分断を超えて、共生をいかに見いだすか。啄木の警鐘が、遊座さんの語りが、天上からこだましている。「岩手の地から意想せよ」と。