〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木も新成人も 時代の波を受ける若者は、いつも大変


[シロタエギク]


「(社説)スマホ世代の新成人 手中の「利器」が時代開く」 【朝日新聞

  • 若者をとりまく状況は決して明るくはない。少子高齢・人口減少社会の到来で、将来の負担は重くなる一方だ。息苦しさを感じ、先行きに不安を抱く人、自らの無力にいらだちを覚える人も多いかもしれない。
  • だが、若い世代が秘める大きなパワーと可能性を実感させられる出来事が昨年あった。アニメ「君の名は。」の大ヒットだ。興行収入は200億円を超え、邦画では宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」に次ぐ。立役者になったのは、スマートフォンという小さな「利器」を手に握り、それを自在に使いこなす若者たちだ。
  • 部屋でパソコンに向き合っていた時代と違い、手軽なスマホならば、リアルな世界で実際に体験したり他者とふれあったりしながら、同時にネット経由で見えない誰かとコミュニケーションをとることもできる。ここでもヒットの鍵を握るのは若者たちだ。
  • 時代の波頭を受けて生きる若者は、いつの世も大変だった。歌人石川啄木は1910(明治43)年、青年らを押しつぶすような当時の社会の様子を評論「時代閉塞(へいそく)の現状」に書いた。東京朝日新聞で校正係として働き、妻子と母を養っていたが、その2年後に26歳で死去。多くの優れた詩歌が残された。生前、自らの望むようには小説や評論を出版できなかった啄木に対し、新成人はスマホひとつで、知らない人や世界に発信できる世界に生きている。
  • つながる道具の力を、時に失敗もしながら、でも前向きに使ってゆこう。発見をもたらし、新しい文化をうみ、社会を豊かにする。そんな未来をスマホ世代の若者に見いだしたい。

(2017-01-09 朝日新聞