〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

永六輔さん 旧渋民小学校で啄木についての「授業」をする

「(みちのものがたり)永六輔の旅路 東京都 知らない街をカバン一つで」【朝日新聞

  • 人生の大半を旅して過ごした人だった。土曜日のラジオ出演が終わると旅に出て、金曜の番組打ち合わせに間に合うように帰京する。ときには金曜に間に合わず、番組直前に戻ることもあった。木綿の手ぬぐいに下着を2セット、風呂敷と手帳を入れた小さなカバンを携えた旅はほぼ毎週、50年近くにわたって続いた。
  • 昨年7月、83歳で亡くなった永六輔さん。旅の体験は独り占めせず、土曜の放送で話し、リスナーと共有した。
  • 知らない街を歩いてみたい――。永さん作詞の歌とともに始まる「遠くへ行きたい」(日本テレビ系)は、1970年から続く長寿番組だ。もとは「六輔さすらいの旅 遠くへ行きたい」として永さん1人が全国を旅する番組として始まった。
  • 記念すべき初回は「岩手山――歌と乳と」。当時の映像を見て驚く。岩手県小岩井農場で牛や羊を追い回す。石川啄木記念館では「永六輔先生」として、誰もいない旧渋民尋常高等小学校の教壇で啄木についての「授業」をする。名所の説明はほとんどない。行き当たりばったりのような雰囲気すらある。
  • 「『僕の旅にカメラがついてくる』というのが永さんのスタンス。段取りをとても嫌がった。ディレクターが『もう1回やって』というのは禁句。言おうものなら『僕もう帰る』とどこかに行ってしまった」。(岩本美帆)

(2017-01-07 朝日新聞