〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

まさに「はたらけど はたらけど」の生活苦……


[秋深む]


◎論説 < 岩手日報
 「貧乏物語」100年 深刻な格差は今もなお

  • 経済学者、社会思想家の河上肇が「貧乏物語」を新聞に連載したのは100年前。「貧困」「格差」を鋭く問う内容は大きな反響を呼んだ。
  • 読み継がれる本を手にすると考え込んでしまう。1世紀を経た今、その問題は深刻なままだからだ。米大統領選でトランプ氏が支持を広げた背景にも格差に対する大衆の不満があった。
  • 「貧乏物語」連載のある回は、その数年前に発表された石川啄木の歌「はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る」を取り上げて解説。河上は記す。今日の文明国にあって、この歌のように一生を終える者がどんなに多いことか、これは20世紀における社会の大病だ−と。
  • その大病はどのようなものか。当時、最も豊かな国の一つである英国の一都市の実態調査を基に示した。一人の生活に必要な費用の最低限を「貧乏線」と定義。その線より下にある人々の貧乏の原因は「主な働き手は毎日規則正しく働いているのに、賃金が少ない」が半数だ。まさに「はたらけど はたらけど」の生活苦。
  • 「人はパンのみにて生くものにあらず、されどまたパンなくして人は生くものにあらず」を訴えた「貧乏物語」。その問いかけは今なお重い。

(2016-11-27 岩手日報