〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

<ある朝のかなしき夢のさめぎはに鼻に入り来し味噌を煮る香よ>。石川啄木

有明抄>佐賀新聞
 あさご藩

  • <ある朝のかなしき夢のさめぎはに鼻に入り来し味噌(みそ)を煮る香よ>。石川啄木(たくぼく)の歌である。悲しい夢をみた朝、ふさぐ心をいくぶん晴れやかにしたのは味噌汁の香りであったのだろうか。
  • 発酵学者で食に詳しい小泉武夫さんは、「味噌汁の匂いほど家庭に平和を感じさせ、家中を落ちつかせ、そして安心させるものはまれである」と著書で説いている。朝に具だくさんの一杯の味噌汁を飲むことで、一日の活力を得るという人は多かろう。朝食が原動力になる。
  • いま、佐賀の食材を朝ごはんに使って産品を売り込む事業「あさご藩」を、県が展開中だ。時代劇風のPR動画に注目が集まっている。この取り組みは、佐賀の産物を広め、体のリズムをつくる朝ごはんにも目を向けるきっかけになるだろう。折しも、新米の季節である。(章)

(2016-10-25 佐賀新聞)