〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「はたらけど/はたらけど猶…」ラジオ体操の場所

「風土計」【岩手日報

  • 関東の友人から残暑見舞いのメールが届いた。「今年の夏休みはラジオ体操の場所探しが大変でした」。子ども会の役員を務めており毎年、場所を転々としているとのこと。理由は近隣住民からの〝抗議〟だという。「要は子どもの声がうるさいらしい」。随分、世知辛い時代になったと思う。眠い目をこすりながら学校や空き地に集合し、首にぶら下げたカードにはんこをもらう。夏休みの風物詩も昭和の遺物か。
  • 「はたらけど/はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり/ぢつと手を見る」。石川啄木の「一握の砂」が浮かぶ。出版された1910(明治43)年当時、多くの若い世代が困窮に苦しみ、未来を奪われた。富国強兵の名のもとに。
  • 当時は戦争、現代は権利主義。いつの世も、どこかの世代に「時代の体重」が重くのしかかる。たかがラジオ体操と言うなかれ。無意識に広がる風潮を敏感に意識しないと。

(2016-08-29 岩手日報