〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

<雨に濡れし夜汽車の窓に ……>石川啄木

編集手帳<読売新聞

  • 狐がおいしそうな葡萄を見つけた。食べたいのだが、高い所にあって跳び上がっても届かない。狐は捨てぜりふを残して立ち去る。「こんな葡萄、酸っぱいに決まってるさ!」。イソップ寓話の『狐と葡萄』である。
  • 高い部屋は3泊4日で1人95万円。手の届かぬ葡萄は人の世にもある。来年5月1日から運行がはじまる豪華寝台列車トランスイート四季島」の原寸大の客室模型を、JR東日本が報道陣に公開した。
  • <雨に濡れし夜汽車の窓に/映りたる/山間(やまあい)の町のともしびの色>(石川啄木)。向かいに座ったおばあさんにミカンをもらったり。若いお母さんが目の前で赤ちゃんに授乳を始めて、うろたえたり。最近は年齢のせいか豪華列車の旅よりも。お金を積んでも二度と行けない追憶の旅に心ひかれている。

(2016-06-17 読売新聞)