〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

<年ごとに肺病やみの殖えてゆく……> 石川啄木


[サクランボ]


結核 有明抄>佐賀新聞

  • <年ごとに肺病やみの殖(ふ)えてゆく 村に迎へし 若き医者かな>。明治45年、結核により26歳で命を失った石川啄木(たくぼく)の歌である。
  • 明治後半から大正、昭和初期の日本で結核が猛威を振るい、死亡率首位が長く続いた。田舎から駆り出された女工たちは貧しい食事と過酷な労働の末、肺病に倒れ故郷の実家に戻り、感染を引き起こして近隣を巻き込んでいくのである。冒頭の歌には近代化、産業化の過程の中で、結核が地方へ蔓延(まんえん)していくさまが詠み込まれている。(福田眞人著『結核という文化』)
  • ここ日本でも毎年2万人が罹患(りかん)し、2千人以上が亡くなっている。せきやたんが2週間以上続いたら結核を疑う必要があるそうだ。消え去った病気ではない。
  • 啄木の妻や母も結核で命を落とし、2人の子どもも後に同じ病で夭折(ようせつ)している。すさまじい感染の連鎖を見るとき、この病気を侮ることの恐ろしさが浮かび上がってくるようである。(章)

(2016-05-30 佐賀新聞記事
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