ふと、石川啄木の歌を思い出した。
《ふるさとの 訛(なまり)なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく》
- 上京した啄木が、ふるさと岩手への郷愁を詠んだ歌だ。「停車場」は東北からの玄関口である上野駅といわれ、都会で暮らす寂しさと、ふるさとの温かさが同時に伝わってくる秀歌だ。
- 3月28日。晴れ渡った土曜の午後、私は甲子園球場のアルプススタンドにいた。82年ぶりの選抜出場を果たした母校・松山東の2回戦を応援するためだった。満員のスタンドでは伊予弁が飛び交った。
- 春と夏の甲子園球場では全国の「ふるさとの訛り」を聴くことができる。それを聴きに行くのも、甲子園の楽しみ方のひとつかも知れない。(編集委員 神田誠司)
(2015-04-07 朝日新聞)
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