〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木が首席で卒業し 教えた校舎 渋民尋常小学校


[ひな祭り]


みちのく建物探訪
 盛岡・旧渋民尋常小学校 啄木、学び教えた校舎

「ふるさとの 山に向ひて言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」

  • 歌人石川啄木が古里の旧渋民村(盛岡市玉山区渋民)から見える岩手山を詠んだ歌。その故郷にある石川啄木記念館敷地内には、木造2階建ての「旧渋民尋常小学校」が建つ。かつて啄木が在学し、20歳から1年間教壇に立った校舎だ。「その昔 小学校の 柾(まさ)屋根に 我が投げし鞠(まり)いかにかなりけむ」など、在学当時を懐かしむ作品もある。
  • 校舎は1884年、この場所とは違う神社脇に村民の寄付で建設された。 啄木はここを首席で卒業。盛岡中学(現岩手県盛岡一高)に進んだが中退し、盛岡や東京で執筆活動をした。
  • 校舎は1913年に別の場所へ移築後、公民館としても使われた。老朽化したため、戦後に 取り壊し計画が持ち上がったが、啄木の母校を残そうとの機運が高まり、生誕100年を 機に同記念館が建てられた1986年に現在の場所に移された。
  • 毎年9月には全国の啄木ファンが集まり、同記念館の森義真館長と研究家の対談など「啄木学級故郷(ふるさと)講座」が開かれる。地元有志は普段から障子を張り替えたり防腐剤を塗ったりし、小学生は掃除するなど、校舎は啄木の遺徳を伝える地域の宝物だ。森館長は「啄木の歌は誰もが持つ気持ちを上手に表現し、我々の心に響いてくる。啄木が学び、児童と触れ合ったこの校舎は彼の生涯の一端に触れられる貴重な場所」と話す。【浅野孝仁】

(2015-02-28 毎日新聞
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