〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

焼け野原になる日本を啄木が考えもしなかったように……

風土計 岩手日報

  • 晩年の石川啄木には、正月の歌がいくつかある。気分の移りゆく様子が今に通じて面白い。
  • まずは有名な<何となく今年はよい事あるごとし元日の朝晴れて風無し>。高揚感あふれる元日から、気分は少しずつ下っていく。<正月の四日になりてあの人の年に一度の葉書も来にけり>。4日に届く年賀状を何やら気の抜けた思いで読む。
  • 103年前に26歳で早世した啄木は、20世紀の初めを駆け抜けた人だった。最晩年は病と闘いながら仕事に打ち込む。力尽きて没した2年後、第1次世界大戦が始まった。長生きしていたら二つの大戦を経験し、59歳で玉音放送を聴いたはずだ。
  • 戦後70年の今年、21世紀初めの15年が駆け抜けていく。この間に震災はあったが、身近な戦火はなかった。でも焼け野原になる日本を啄木が考えもしなかったように、これから先は誰にも分からない。

(2015-01-06 岩手日報

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