にいがたの一冊
『石川啄木入門』 池田功著
評者 田村久男(明治大学政治経済学部教授)
◎真の姿と新しい魅力を発信
- 明治期の歌人石川啄木は今でも多くの人々に読みつがれている。しかし、その一方でセンチメンタルな抒情詩人にすぎないといった批判的な評価もなされ、家族を顧みない浪漫主義者、借金魔で働こうとしなかった人間などという誤解や偏見も存在する。
- 本書は、従来の誤ったイメージを一つ一つ訂正しつつ、啄木の生涯と作品を概観することで作家の真の姿を伝えようとする。ここには次々に新しい啄木像を発信し続けてきた著者の、一人でも多くの人に啄木の魅力を知ってもらいたいという強い思いが込められている。
- 短歌や詩だけでなく、啄木の原点があるとする小説、大逆事件や日韓併合に直面して社会批判を強める評論、日本文学研究者D・キーンが高く評価した日記、窮乏を訴えつつ借金の無心をする知人宛ての手紙など、具体的な事例を上げながらそれぞれの世界がもつ独自の魅力を引き出している。
- 今、「この時代に啄木を読む魅力とは一体何なのか」を教えてくれる名著である。
(2014-05-11 新潟日報)
『石川啄木入門』
池田 功 著 桜出版発行 (電 03-3269-3420)
1200円+税
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