近眼(ちかめ)にて/おどけし歌をよみ出でし/茂雄の恋もかなしかりしか(「一握の砂」所収)
- 明治期の歌人、石川啄木の友人で歌にも詠まれた医師、小林茂雄(1886〜1952)の初の評伝が出版された。旧制盛岡中学(現・盛岡一高)時代から啄木と親交が深かった小林の生涯をたどり、啄木作品の背景を掘り下げている。
- 本は「啄木の親友 小林茂雄」と題され、国際啄木学会事務局長の森義真さんが著した。
- 啄木が歌に詠んだ「茂雄の恋」は、啄木の妹光子に対する小林の片思いだと解釈されてきた。森さんは著書の中で、光子が「誰が破りし恋ぞ、詠み人にはあらで」(恋を破ったのは啄木)と記し、小林本人も「悲しいような恋をしたことはない」と書いたことを紹介。恋をしていたのは光子であり、「おどけし歌」も啄木の創作ではないかと指摘した。
- 本は2100円。問い合わせは、出版元の盛岡出版コミュニティー(019-651-3033)。【重長聡】