〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木短歌を見つめ直して -北海道新聞-

[ジュズダマ]


《啄木特集》「音楽・映像性色濃く」・「憧れ、希望 感性今も」
◎ 作家:新井満さん 北海学園大准教授:田中綾さん 対談(上)・(下)
石川啄木没後100年に合わせた特集の締めくくりとして、啄木の短歌を生かして「啄木・組曲」をつくった作家の新井満さんと、短歌研究を通じて啄木と接してきた北海学園大准教授の田中綾さんに、対談してもらった。


新井 (啄木との関わりは)私は、啄木のロマンチスト、夢見る詩人という側面から入った。田中さんはテロリスト、危険人物という側面から入られた。
田中 ロマンチシズムも、社会変革への志も、根っこは同じでしょうか。
新井 男女関係とか夢に向かった時にはロマンになった。社会構造とか政治構造に向かった時には革命思想につながった。


新井 啄木の歌はどんなリズムにも合う。ワルツ、4拍子、レゲエでも。
田中 若者に街頭でやって─と、啄木の短歌や詩を仕向けても面白いです。
新井 日本人のシンガーソングライターの最大の弱点は作詞が下手だということです。良い詞があって、感動があった時に初めて、その感動をメロディーに託すことが可能になると思う。
田中 啄木短歌の魅力は、音楽性とともに、映像的であることです。あの短い 31音なのに、その情景がパッと目に浮かぶ。これはその後の詩人たちに影響を与えたと思います。


田中 (3.11以降の世の中に、啄木からのメッセージは)啄木は晩年、国家という問題は今の一部の人たちの考えているようにそんなに軽い問題であろうかと。すべての人はもっと突っ込んで考えなければならぬと提言をしています。まさに 3.11以降、復興の進め方とか、エネルギー対策について今まさに国家を考える機会を与えられているので、啄木の言葉は非常に切実に響きます。
新井 大津波で東北の人々は故郷を喪失してしまった。望郷の歌人・啄木が再発見されてもいいと思います。啄木は100年後の 21世紀にも生きていると思いました。
(構成・黒川伸一、岩本茂之)

  • 石川啄木 没後100年」特集は今回で終わり。

(2012-09-24、2012-10-01 北海道新聞