〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

いのちなき砂のかなしさよ -高田松原の啄木碑


[ミズナラ]


河北春秋

  • <いのちなき砂のかなしさよ さらさらと 握れば指のあひだより落つ>。石川啄木の秀歌を刻んだ碑が陸前高田市の名勝・高田松原にあった。66年に建てられたが、東日本大震災津波で約7万本の松林とともに流失した。この歌碑は2代目。最初の碑も60年のチリ地震津波で流されたが奇跡的に見つかり、今は高台に移設されている。
  • ことしは啄木の没後100年に当たる。出身地・盛岡市の関係者らでつくる記念事業実行委員会は、高田松原の歌碑の代わりとなる碑を陸前高田市に建てようと募金活動をしている。万感の思いで完成を心待ちにしている人がいる。石川啄木記念館の菅原寿館長。職責上というわけではない。陸前高田は菅原さんの古里。震災で実家は流され、同級生8人、教師時代の教え子23人を失った。
  • 望郷の歌人の碑は、悲しみを乗り越え生きる人々のよりどころになろう。

(2012-06-17 河北新報>河北春秋)