- 何年か前、『読売俳壇』で読んだ句がある。〈職探す人に幸あれ啄木忌〉(上田久幸)。仕事を探して各地を転々と放浪した歌人に、現代の就職難を重ねている。
- 石川啄木は最後の記述となった1912年(明治45年)2月20日の日記にも金策の憂いを綴っている。あり余る詩才を抱きつつ、処世の苦しみ多き26年の生涯を閉じたのはその年の4月13日、あすで100年になる。
- たとえば仕事を詠んでは、〈気の変る人に仕へて/つくづくと/わが世がいやになりにけるかな〉。自分の心境そのままだ…という人もあろう。…少しも古びることのない、奇跡のような歌人である。
(2012年4月12日 読売新聞)