〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

新しき明日の来るを信ずといふ…啄木


[ペーパーホワイトスイセン]


社説:成人の日 おおいに発言しよう

  • <新しき明日の来(きた)るを信ずといふ/自分の言葉に/嘘はなけれど−−>。近代日本を代表する歌人の一人、石川啄木の作品だ。今年4月で没後100年になる啄木は、貧しさや孤独に苦しみながらも、希望を捨てず、でも不安もかみしめていた。啄木を読み返すと、社会制度も国際環境も随分と違うのに、現代人の心情といくつも共通点が見つかる。
  • 「成人の日」を迎えた全国 122万人の若者たちに心から、おめでとうと言いたい。きっとさまざまな希望を抱いていることだろう。でも、不安が胸をよぎっている人も少なくないかもしれない。
  • 再び、啄木を引用しよう。26歳で死去する 2年前に評論「時代閉塞(へいそく)の現状」を執筆している。大逆事件天皇暗殺計画をたてたとして多数の社会主義者が処刑された事件)後の圧政の中、格差や就職難を見つめながら、何とか豊かな未来を構想しようと呼びかけた。
  • こんな一節がある。<明日の考察! これ実に我々が今日において為(な)すべき唯一である、そうしてまたすべてである>。理想は「善」や「美」に対する空想ではないと記し、「今日」を研究して「明日」の必要を発見すべきだとも主張している。
  • 理想を求める明治の思いは、閉塞感の漂う現代を生きるうえでも有効だろう。地に足の着いた議論で、民主主義に参加しよう。発言を重ねて、「明日」をつくっていこう。

(2012-01-09 毎日新聞>社説)