〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

青に透く かなしみの玉に枕して 石川啄木

[ホトトギス]


<照明灯>

  • 青に透く/かなしみの玉に枕して/松のひびきを夜もすがら聴く。石川啄木の歌集「一握の砂」。「秋風のこころよさに」の章に収められた一首だ。
  • 小説で身を立てる志を胸に北海道から上京した啄木。しかし、自信をもって書いた作品が受け入れられることはなく、失意の日々を送る。そんな秋の初めに、同郷の友である金田一京助の計らいで引っ越した新たな住まいの心地よさが啄木の歌ごころを駆り立てたらしい。
  • きょうは二十四節気の白露。暦便覧には「陰気やうやく重なりて、露こごりて白色となれば也」とある。
  • 震災の痛手から半年。台風12号の災禍は列島に無残な追い打ちをかけた。人智(じんち)の及ばない自然の猛々(たけだけ)しさに立ちすくむ。「かなしみの玉に枕する」被災者は見たくない。今はそう祈るばかりだ。 

(2011-09-08 神奈川新聞>照明灯)