〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

国際啄木学会「2011夏セミ」<その4> 啄木行事レポート

《関連イベントに参加しての私的レポート》



[日景氏の発表]



国際啄木学会「2011年夏のセミナー」2011年7月3日(日)明治大学


<研究発表 -1>

石川啄木が読んだ英語資料のコーパス言語学」日景敏夫氏


はじめに
コンピュータが普及して調べたい事柄を検索すると、今まで膨大な時間をかけてきたものが瞬時にわかるようになった。そこで、先人が行った啄木の英語資料をコーパス言語学で研究しようと思った。
川並秀雄(1972)、大谷利彦(1974)、森一(1982)の分析・解説の資料を調べると、間違いではないかというところがたくさん出てきた。
当時、啄木が参考資料として選んだ本はすべて名作といわれるものばかりであり、現在も古典として国内外で読まれている。啄木がどこでその本の情報を得たのかは興味がある。


川並秀雄、森一が誤解している作品
モントゴメリー「黄昏」twilight について検証した。

川並秀雄は「Twilight という題の詩はなく、Moonlight の誤りと思う。」と述べている。森一は、「啄木の賛辞は、彼独特の独善的、誇張表現であろう。」と論評している。

英米文学辞典には詩人の Montgomery の名が3人でている。Robert Montgomery イギリスの詩人 1807-1855、Lucy Maude Montgomery カナダの児童文学者 1874-1942、James Montgomery スコットランドの詩人 1771-1854。その中のRobert Montgomery と Lucy Maude Montgomery の詩集には Twilight がある。
川並秀雄、森一は、「モントゴメリー」を James Montgomery と思い込んでいる。
しかし、Robert Montgomery の詩の「自然との時間は、神との時間なり。」「そのとき、感性が、めぐる空想を神聖化する;」「おお、黄昏よ!かくして、霊魂は知るであろう」「汝の優しき静寂から、昼間が拒絶するものを。」は、まさに「夕の歌として最上の者也、その宗教詩人たる丈信仰の念躍として紙上に現はる。」という啄木の絶賛に値する。

Twilight (Robert Montgomery)

An hour with Nature is an hour with heav'n, 自然との時間は、神との時間なり、
When feeling hallows what the fancy views ; そのとき、感性が、めぐる空想を神聖化する;
And thus, oh twilight! may the spirit learn  おお、黄昏よ!かくして、霊魂は知るであろう
From thy fond stillness what the day denies. 汝の優しき静寂から、昼間が拒絶するものを。
……
   (日景敏夫訳)



○ 啄木の読んだ twilight は Robert Montgomery なのである。


(研究発表-2 につづく)