〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木の短歌、賢治の短歌 第140回」


ハクモクレン


「啄木の短歌、賢治の短歌」盛岡タイムス連載中
   盛岡大学長 望月善次

第140回 比喩的涙

  • 啄木の短歌

  しつとりと
  なみだを吸へる砂の玉
  なみだは重きものにしあるかな

  • 賢治の短歌

  ある山は
  なみだのなかにあるごとく
  木々をあかつきのうつろに浸せり。  

    • 啄木歌は、言語形式的に言えば・・・現実世界からの飛翔は明らかである。しかし、啄木のコワイところは、何気なくこの作品を読むと、そこに飛翔感や不自然さを全く感じさせないところである。
    • 賢治作品は、「なみだのなかにあるごとく」に見るように「ごとく」という、比喩を示す指標は明確に示されていて、「指標比喩」歌となる。同時に「山VS(木々を)浸せり」と結合比喩を用い、二重の比喩を使用している。

(2009-03-19 盛岡タイムス)