〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「平成大家族」一緒にご飯を食べていても


タチアオイ


「平成大家族」

72歳の元歯科医・その妻・長男・妻の母が暮らす家に、長女一家3人と訳あり次女が戻ってくる。そしてさらに人数が増えて大家族になってしまう。
次々に起こる問題、破産・離婚・不登校・ヒッキー・認知症……。


同じ食卓を囲む家族といえども、互いの内面はわからないものだ。ところが、家族一人一人に自分の心を語らせていく。読んでいるほうは、本人が言うんだから納得する。
92歳の祖母の心には支離滅裂になるだけの理由があるし、長女や次女の選んでいく道もうなづける。一番笑顔になってしまったのは「かっつん(長女の息子)の恋!」である。彼の内面がわかってくると人柄のすばらしさにも気づき、優しさやヒッキー(ひきこもり)の持つ力も伝わって来る。
お互いに心配はするが踏み込まず、適度な距離を持つ家族のあり方に気持ちのよいものを感ずる。

重い内容の割にはテンポよく軽快に話は推移する。ジグソーパズルをはめ込んでいくように人物をちりばめる著者の力のすごさが快い。