〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「歌う記者 石川啄木」朝日新聞連載-7

【「一握の砂」表紙】                


夜おそく
つとめ先よりかへり来て
今死にしてふ児を抱けるかな
              石川啄木
 

連載-7
「歌う記者 石川啄木 --朝日新聞社の3年間」

  • 「一握の砂」は石川啄木が生前に刊行した唯一の歌集である。風変わりな序文がついている。筆者は薮野椋十(啄木をクビにしようとした社会部長・渋川玄耳)だ。
  • 序文のあとに、「一本を取りて亡児真一に手向く」とある。原稿料はその子の薬代となり、見本刷が届いたのは、その子の火葬の夜だった。啄木は歌集編集の最中に生まれたばかりの長男を失ったのだった。

(2008-01-19 朝日新聞夕刊)