〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

文字盤の向うの世界

電波時計が止まった。電池を入れ替えると、失われた時を取り戻すかのように必死で動き始めた。1時間を30秒ほどで廻る。少し離れてから戻ってみたら、あらぬ時刻を指していた。


  おいおいキミはどこの世界へ行ってしまったんだい。
  ここと違う世界で、そこの時を刻んでいるのかい。


  文字盤の向こうから異次元の匂いがした。