〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

汽車を下りしに/ゆくところなし 啄木

[ソバとキバナコスモス]


リニア中央新幹線を下りて…[斜面]

  • 〈何となく汽車に乗りたく思ひしのみ/汽車を下りしに/ゆくところなし〉。明治期の歌人石川啄木が詠んでいる。地方に鉄道が整備された時代。線路の先にあるように思えた希望が、実際は幻想にすぎないことを知った若者の嘆きが伝わってくる。
  • 東京−大阪を結ぶリニア中央新幹線と聞くと、なぜかこの歌を連想する。
  • どのルートを通るにしても、リニアは自然環境に手を加える代償に見合うものなのか。新しい駅の周りに、どこにでもあるような看板や店が並ぶ街の光景が広がったとしたら、〈汽車を下りしに/ゆくところなし〉にはならないか。

(2010-11-01 信濃毎日新聞>斜面)