〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

墓の代わりに木を植えて…「垂直の記憶」

「垂直の記憶---岩と雪の7章」

ギャチュン・カンを含め12年間に18回も挑戦したヒマラヤの登攀を、クライマー自ら選択し振り返る。8,000mを超えても酸素ボンベや固定ロープを使わず最低限の装備のみで登る。この過酷な“アルパイン・スタイル”をなぜ選んだか。
口絵のカラー写真は、各章ごとにとっておきのものが載っている。本文を読みながら何度も写真を開いて見つめた。
各章に「両親」「死」「夢」などのコラムがあり、短い文は著者のひととなりをよく表している。
特に印象深いのは「結婚」。「我が家では、片方が死んだときの約束がある。それは墓を立てる代わりに木を植えることだ…」そして、木の種類も決まっている。

人それぞれに違うと思うが、私は、「凍」を先に「垂直の記憶」を後に読んでよかった。文章のプロと登山のプロの違いが興味深い。
改めて、生きていくのにどうしても必要な「なにか」について考えさせられた。