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若き代用教員の熱血授業 愛すべき青春記
書評子4人がテーマに沿った名著を紹介
今回のテーマは「給与」です
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『雲は天才である』
著者 石川 啄木 [著] 出版社 講談社
- 若者が初めて給料をもらう様子を描いた小説としては、夏目漱石『坊っちゃん』がすぐに思い浮かぶ。東京の物理学校を卒業した坊っちゃんは四国の旧制中学に数学教師として赴任する。月給は「四十円」、授業は週「二十一時間」。
- 『坊っちゃん』は一九〇六年発表。同じ年、石川啄木は『雲は天才である』を書いた。岩手・渋民村で代用教員をした啄木の経験が投影されている。主人公は21歳で「S―村」の小学校の代用教員。「尋常科二年受持」に加え「課外二時間ずつ」を担当しているから、毎日朝から夕方まで教壇に立っていることになる。「月給は大枚金八円也」。坊っちゃんの五分の一の薄給だ。
- それでも主人公は「みずから日本一の代用教員をもって任じている」。熱血の授業は生徒たちの胸を熱くさせる。「教場はまるで熱火の洪水だ。自分の骨あらわに痩せた拳がはたと卓子を打つ。と、躍り上がるものがある、手を振るものがある、万歳と叫ぶものがある。まったく一種の暴動だ」。
新潮社 週刊新潮 2023年3月30日花見月増大号 掲載
(2023-04-02 ブックバン)
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