〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

1909年 啄木が「判断=実行=責任」と書いていた

カワヅザクラ

時論(3月19日)マスク着脱 判断と責任 【静岡新聞

論説委員 山崎善啓

  • 詩人で歌人石川啄木が、「判断=実行=責任」と書いていた。1909年、東京毎日新聞に発表した詩についての評論「弓町より」である。明治末期、文語定型詩に対し口語自由詩の運動が起こった。啄木はその運動への批評について持論を展開した。
  • 「詩人は自己の便利とする言葉で歌うべきである。『ああ淋[さび]しい(口語)』と感じたことを『あな淋し(文語)』と言わねば満足されぬ心には、無用の手続きがあり、責任の回避があり、判断のごまかしがある。私にとっては極力排斥すべき趣味」
  • 批判など不都合を避けるため、自分の思った言葉を使わず取り繕う。それが納得できなかった啄木は、判断、実行は責任を伴うとしたのだろう。「判断=実行=責任」である。
  • 判断といえばマスクの着脱。政府の新型コロナウイルス感染対策が大幅に緩和され、マスク着用は個人の判断に委ねられた。
  • 個人の判断と言われても、である。筆者も、周囲への配慮など責任を考えるとなかなか外せないと思う。啄木のようにズバッと言える強靱[きょうじん]なメンタルは、持ち合わせていない。

(2023-03-19 静岡新聞

 

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