おとなの楽習 10 文学史のおさらい
著者 川島周子 (著) 現代用語の基礎知識 (編)
まずは身近な項目から、どこからでも入ってください。そして「気になる」人が見つかれば、日本文学は、なんと魅力的で、健気で、カッコイイ人達の手で育てられてきたのかと、熱くなれること間違いなしです。
第5章 近代の文学
石川啄木(1886〜1912)
- 故郷を思う時、親を思う時、友を思う時、片想い、失恋、挫折、後悔、倦怠、寂しさ、憧れ、様々な感情に支配される時、啄木の歌がふと口をついて出た経験を持つ人は多いでしょう。
かにかくに 渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川
- 岩手県日戸村に生まれ、幼少期は渋民村の寺の住職の長男、一(はじめ)として過ごしました。神童といわれ、県立盛岡中学に入学しますが、卒業まで半年という時に自主退学し、小説家になるつもりで上京したのが16歳。
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
- 学歴の無さが、明治のエリート尊重社会の中で何度も彼の自尊心を傷つけることになるとも知らず。東京で鉄幹、晶子と知り合いますが、小説家の夢は敗れ帰郷。
そのかみの神童の名の
かなしさよ
ふるさとに来て泣くはそのこと
- 正規の学歴のない悲しさ、貧困と結核に身体をさいなまれながら、自分の才能を信じて希望を失わない心で、文学をめぐる社会状況を『時代閉塞の現状』として発表します。
- 晩年というにはあまりに若い明治43年春、朝日新聞社会部部長の言葉に励まされ、歌集の出版を計画します。ただ、この『一握の砂』の原稿料二十円は、生まれてわずか24日で亡くなった長男真一の薬代、葬儀代となりました。
おそ秋の空気を
三尺四方ばかり
吸ひてわが児の死にゆきしかな
- 明治45年4月、26歳の若い死。
おとなの楽習 10 『文学史のおさらい』
著者 川島周子 (著) 現代用語の基礎知識 (編)
発行所 自由国民社 2009年7月 発行
定価 1,320 円(本体 1,200 円 + 税)