日本語教師のネタ帳
東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる(石川啄木)
「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」(石川啄木)は中学生のころから大好きな短歌でした。〔現代語訳:東の海の中に小さな島がある。その島の磯の白い砂浜にたたずみ、私は泣きながら蟹とたわむれている〕
日本語教師としてこの歌を鑑賞し直すとすると、新たな魅力が発見できます。
東海の小島の磯…
明治の代表的歌人石川啄木(1886-1912年)の歌集「一握の砂」の最初に載せられた有名な短歌です。「東海」といえば、三重、愛知、静岡あたりの海かと思ってしまいますが、それは勘違い。実際は特定の場所を指しているのではなく、西洋と東洋の「東」に当たる「東の方の海」ぐらいのイメージではないでしょうか。
石川啄木が実際に思った、東海、小島、磯がどこであるかということはあまり大きな問題ではないような気もします。文学作品というものはそのもの自体で鑑賞しうるものではないかと、私は思います。
ズームインの速度感
まず誰もが気がつくこの歌の特徴は、前半の「東海の小島の磯の白砂に」で「東海」→「小島」→「磯」→「白砂」へと地球レベルの大きな範囲から一気にズームインする視覚的効果です。
・「~の~の~の」によるスピードアップ
・「に」を結節点として「われ(私)」視点への移動
音象徴(おんしょうちょう)からの考察
音象徴、特に「母音あいうえお aiueo」の使い方という観点からこの句を見てみましょう。
・TOKAINO KOJIMANOISONO SHIRASUNANI WARENAKINURETE KANITITAWAMURU
・あいうえお(aiueo)の音象徴
・外部世界から内部世界への心の視点移行
(2022-06-14 日本語教師のネタ帳)
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