新日本歌人
新しき明日の来るを ── 啄木の、歌に秘められた深き思い ──
小杉正夫
新しき明日の来るを信ずといふ
自分の言葉に
嘘はなけれど──
は、啄木の第二歌集「悲しき玩具」の中でも私たちの心の中に忘れえぬものとして深く残っている歌です。
啄木は貧しい病身の下でも、あの時代に於ける家族制度、階級制度、資本制度などを批判する等社会主義を信ずることによって、「明日の新しい社会」への発展を見通していたのでした。必ず新しい明日が来るという自分の言葉には嘘はない。しかし現在の無力な自分には、果たして何ができるのだろう。この歌には、啄木の真面目な精神的な苦悩が窺えるのです。
つづき
石川啄木と父・一禎の歌碑に因んで
梶田順子
南国土佐の明るい陽光の中に、啄木と父・一禎の歌碑が建っている。銘板には「啄木の父 石川一禎終焉の地」とある。
昨年9月12日、歌碑建立十周年を記念する木柱が新たに設置された。
啄木の父が高知駅の所長官舎で亡くなったことを知る人は少なかったようだが、歌碑建立以来徐々に関心が寄せられるようになった。この木柱は、道路側からも見えやすく歌碑の案内にもなると好評をえている。
つづき