ありふれた言葉だからこそ強く尊い
―― 没後12年、人々の魂を揺さぶり続けるZARD・坂井泉水の世界
- ZARDのボーカル・坂井泉水さんが亡くなって今年の5月27日で12年になる。享年40。1991年にデビューして、代表曲「負けないで」などは今もカラオケの定番ソングとして親しまれている。まさに平成を駆け抜けたアーティストだった。彼女の素顔、今も歌い継がれる理由を探った。
- 1991年デビューシングル「Good-bye My Loneliness」の売り上げ枚数は約25万枚。164万枚を突破した最大のヒット曲「負けないで」は、恋愛・応援ソングとして今なお国民的な人気を博している。亡くなってから12年経った今も、坂井さんの歌はなぜ人々の胸を打つのだろうか。
石川啄木との共通点
- 歌手デビューする前から文章を書くことが好きだった坂井さんは、歌人の石川啄木のファンだったという。啄木の短歌を現代語に翻訳した『石川くん』などの著作がある歌人の枡野浩一氏は、坂井さんの歌詞を「心から思っていることをそのまま言葉にしている」とみる。刺激的なものは皆無で、ほとんどが無味無臭、匿名性の高いものだという。
- 「きっと本人も優しくて、控えめな人だったのではないでしょうか。既存のものに対するアンチもないし、素直に『負けないで』と思っていたのでしょう。私はこれだけピュアな詞を書くのは難しいと思う。本心でなければ、かえって不自然なものになってしまいますから」
- 坂井さんの歌詞で使われる言葉は、毒づいたものはなく、はやりものでもない。ありふれたものだが、枡野氏はそこに啄木との共通点も見いだす。「啄木も人間としてまっすぐで、自分の気持ちをそのまま素直に書いていた人でした。だから、啄木のような短歌をさあ作れと言われても難しいです。坂井さんが啄木に惹(ひ)かれていたのはとてもよく分かる気がします」(ライター・伏見学/写真・菊地健志/Yahoo!ニュース 特集編集部)
(2019-05-25 Yahoo!ニュース 特集)
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