〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 三枝浩樹さん「若山牧水賞」受賞 啄木や牧水の作品に親しみ


[ホワイトサローワトル]


若山牧水賞歌人・三枝浩樹さん 時代つかむ短歌 -山梨-

  • 歌人・三枝浩樹さん(71)は、16年ぶりの歌集「時祷集(じとうしゅう)」で「第22回若山牧水賞」(宮崎県など主催)に選ばれた。短歌結社「沃野(よくや)」の代表で、山梨県歌人協会会長。
  • 兄の昂之(たかゆき)さんは歌人で県立文学館長。父の清浩さんも歌人だった。かつて甲府市にあった実家には歌に関する蔵書がたくさんあり、自然と興味を覚えた。教科書に載っていた石川啄木若山牧水の作品に親しみ、中学3年の頃から身近なできごとを詠み始めた。15歳の頃、父が56歳の若さで亡くなった。その直前の半年間、短歌の添削を受けることができた。「短歌を途中でやめようと思ったことはない。父が背中を押してくれた」
  • 青年期には佐佐木幸綱寺山修司らの自由な表現に衝撃を受け、さらに作歌に傾倒する。「それまでは何となく伝統的な常識のようなものの中にいたが、一気に時代の息吹と交わる歌の世界が見えてきた」

 「時祷集」にも時代を映す作品がある。

  福島にむきあう広島 ヒロシマとフクシマ 雨の八時十五分

  • 2012年8月6日の広島平和記念式典を詠んだ。広島市長は前年に起きた東日本大震災原発事故で苦しむ被災者を、広島の被爆者と重ね合わせ「心は共にあります」と呼びかけた。

 歌集には家族や身の回りの自然を詠んだ作品も多い。

  うつしよに母のいまさぬ四季めぐり今朝甲斐が嶺に雪しろく積む

  • 甲斐市の自宅を出ると、西の方角に雪をいただいた農鳥岳間ノ岳が見える。「山梨は風光明媚(めいび)で四季折々に情趣が感じられる」。そんな故郷に住み続け、亡き母を思う挽歌(ばんか)だ。(平畑玄洋)

(2018-02-04 朝日新聞


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