[キンカン]
埼玉とともに
支局開設90年・県版発行100年 人気コーナー「歌俳欄」 選者に聞く /埼玉
毎日新聞埼玉版で現在毎週木曜日に掲載している通称「歌俳欄」は半世紀以上続く長寿の人気コーナーだ。投稿数は毎週200通、年間で1万通にも及ぶ。短歌の水野昌雄さん、俳句の星野光二さん、川柳の石川蝶平さんの選者3人にそれぞれの魅力を聞いた。
◎短歌・水野昌雄さん 庶民と時代の歴史に
- 「毎日新聞埼玉版の歌壇は、庶民の精神史と同時に時代の歴史にもなっている。非正規労働者とか、政治的なこととか。自分のことと時代のこと、それがずっと出ています」
- 「この歌壇を基に一つの戦後史が書けるんじゃないかと思うくらいでね。夜勤の仕事とか、現代の庶民の縮図みたいな。毎週14首掲載ですが、14人の石川啄木が出ている感じです。働けど働けど楽にならない暮らしとか、でもそれなりに未来に希望を持って、とかね。それと批判精神がこの歌壇の特徴だと思う」
○掲載短歌から選ぶ
休憩所夜勤の若きはそれぞれにケータイ見つめ言葉交わさず 鳩山・小森きよし
非正規の労働ふえて当然と超勤時間定まりてゆく 鴻巣・佐久間正城
憲法を守るべき総理が声高に改正叫ぶ不思議な日本 行田・永沼規美雄
◎俳句・星野光二さん 今を詠むことが大事
- 「俳句はね、今を詠むってことが大事なんです。今っていうのは短い今。うんと縮めると瞬間になるわけで。例えば大根をスパッと切った時、切り口から汁がしたたり落ちる。まさに瞬間ですよね」
○昨年の印象に残る句
行く道やどこを通るも春隣 川口・平山繁寿
俎(まな)板に春菜を刻む朝の音 入間・亀川節
列島を飛び出しそうに夏燕(つばめ) 坂戸・浅野安司
◎川柳・石川蝶平さん 日常の喜怒哀楽を
- 「川柳の歴史は、柄井川柳が生まれてから今年でちょうど300年、昨年は彼が川柳を始めて260年になります。彼は連歌で生活を立てていたんですが、それで飽き足らなかったっていうんでしょうかね。今で言うベンチャー企業を興したんですね」
○過去10年から選ぶ
残り火を消さずにおこう明日がある さいたま・黛衛和
最高の化粧笑顔に負けている 朝霞・石原洋子
履歴書に書けない笑顔武器とする 久喜・岡田孝道
【松下英志】
(2018-01-24 毎日新聞)
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