〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 「かの年のかの新聞の 初雪の記事を書きしは 我なりしかな」 石川啄木


[ドイツトウヒ]


「風土計」 [岩手日報] 2017-11-21

  • きのうの朝、窓の外を見て驚いた人は多いことだろう。車も、道路も、家の屋根も白く染まった。うんざりするほどこれから見る雪も、シーズンの初めは新鮮に映る。
  • 「昨日の朝楊子(ようじ)くはへて障子細目に開け見れば、成程(なるほど)白いものチラ※と街ゆく人の背を打ちて」。記者時代の石川啄木が小樽日報に書いている。<かの年のかの新聞の/初雪の記事を書きしは/我なりしかな>。
  • その冬初めて見る本格的な雪は、今も昔もニュースだった。これらの材料は記者が足で集めたものだが、昔は違う。明治の記者は外に出なかった。街に出てネタを拾うのは「探訪」と呼ばれた。啄木ら記者は中にいて、集まった材料で文章をまとめる。新聞社は政治・経済記事を「硬派」、事件や街の話題を「軟派」と呼ぶ。文才光る啄木は、優れた軟派記者だった。

 ※は繰り返し記号

(2017-11-21 岩手日報


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