- いつからかハスは神秘的な音を立てて咲くものと思い込んでいた。石川啄木に〈しづけき朝に音立てゝ白き蓮(はちす)の花さきぬ〉という断定調の詩がある。博物学者南方熊楠(みなかたくまぐす)も、ハスの開く音を聞きに出る習俗について論考を残した。
- 「本当に音がしますか、何時ごろ鳴りますかという問い合わせをいただく。でも私ら職員は一度も聞いたことがありません」。埼玉県行田市にある公園「古代蓮(はす)の里」で働く山子(やまね)学さんは話す。
- 行田市では1973年、ゴミ焼却場の建設地で桃色の大輪が見つかった。埼玉大の研究者らが調べ、推定1400〜3千年前の地層に眠っていた種子が掘削で目を覚まし たと推定した。主産業の足袋作りが下り坂にあった市は、ハスを核にした公園を開く。「ふるさと創生」をうたって全国の市町村に交付された1億円 をいかした。街はにぎわいを取り戻す。