〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木を生かし、啄木に生きた生涯」遊座昭吾さん追悼


岩手日報
啄木に生きた生涯
 「遊座昭吾さんを悼む」
   望月善次(前国際啄木学会会長、岩手大学名誉教授)

  • 私共の敬愛おくあたわざる遊座昭吾先生がこの世での生涯を終えられた。
  • 「啄木を生かし、啄木に生きた生涯」であったと思う。その四つを記して先生の恩に感謝したい。

一つは、先生が生まれた宝徳寺の縁を生かしたことである。 宝徳寺に育った先生は、その縁を見事なまでに生かし切ったのである。
二つは、啄木研究の地平を開拓したことである。生育の地「渋民」に基づいた『啄木と渋民』、啄木の全体像を通観した『石川啄木の世界』、『啄木秀歌』、晩年の最後の著書『鎮魂〜石川啄木の生と詩想』(2013年)に至るまで啄木研究に関わる基本的問題を解明し続けたのであった。
三つは、その研究を個人の範囲にとどめず、「学会」として組織したことである。啄木研究の巨人岩城之徳先生による「国際啄木学会」の発足(1989年)は、初代事務局長としての先生の働きなくしては考えられないものであった。95年からは会長も務めた。
四つは、啄木顕彰についての働きである。石川啄木記念館の開館(70年)と現在の百年記念館開館(86年)も先生がおられたればこそ可能であったのである。

  • 先生の研究や、お聞きする度に心に沁みるような講演は、こうした生涯を潜らせながら残してくださったのである。先生に感謝し、及ばずながら、残してくださった道をたどりたいと思う。

(遊座昭吾さんは6日死去、89歳)
(2017-01-11 岩手日報