〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「やり場にこまる拳をもて、お前は誰を打つか」啄木

◎コラム「透視図」<北海道建設新聞
「無差別殺人」

  • ニュースを見て、「またか」と嘆息した人も少なくなかったろう。「イオンモール釧路昭和」で21日起こった無差別殺人である。容疑者の男には自分の人生を終わりにしたい願望があり、「人を殺して死刑になりたかった」旨の供述をしているらしい。事実とすれば身勝手極まる。
  • 「どんよりとくもれる空を見てゐしに人を殺したくなりにけるかな」(石川啄木)。生きていれば、ふとそんな気持ちにとらわれることもあろう。ただ、そこであらためて命の尊さに気付くのが当たり前の人間の姿である。
  • 思い出すのは東京の秋葉原で2008年、当時26歳だった犯人が7人の命を奪い、10人に重軽傷を与えた無差別殺傷事件である。これも啄木だが、詩「拳」から一節を引く。「やり場にこまる拳をもて、お前は誰を打つか。友をか、おのれをか、それとも又罪のない傍らの柱をか」。他の誰でもない。打っていいのは「おのれ」だけだ。

(2016-06-23 北海道建設新聞)